戸建て住宅の外壁にはさまざまな種類の外壁材が使用されていますが、なかでも最近特に多く見られるのが、サイディングです。
現在の新築戸建て住宅(低層集合住宅を含む)に窯業系サイディングが使われている割合が78%を超えており、ほとんどの住宅がサイディングを使用しているとも言えます。
サイディングは、経年劣化により、さまざまな劣化を引き起こすため、定期的なメンテナンスが必要です。
この記事では、そんなサイディングの劣化状況に合わせたメンテナンス方法をご紹介いたします。
1 . サイディングの種類と特徴
サイディングとは、板状に形成され、建物の外壁面に何枚も並べ、貼っていくことで壁を形成する外壁材です。
サイディングは、工場で大量生産されるためコストも安く、さまざまな色、模様を選ぶことができます。サイディングボードの大きな4つの特徴として
①施工の手間がかからず、工期が短い
②品質が安定
③コストが安い
④意匠性が高い
という特徴を持つため、非常に人気の高い外壁材です。
サイディングは素材別で分類すると、窯業系サイディング、金属サイディング、木質製サイディング、樹脂サイディングの4つの種類に分けることができます。
サイディング名 | 写真 |
---|---|
窯業系サイディング | |
金属系サイディング | |
木質系サイディング | |
樹脂サイディング |
2 . サイディングのメンテナンスが必要な劣化状況と時期
■サイディングのメンテナンスがなぜ重要なのか?
サイディングはメンテナンスがとても大事です。その理由は、劣化症状が深刻になると、水が建物に浸入してしまい、建物全体の老朽化を早めてしまうことになるからです。
サイディングの主な劣化症状と、症状が出始める年数
劣化部分 | 劣化の症状 | 写真 | 年数(経年数)※ |
---|---|---|---|
塗膜 | 色あせ、光沢低下 | 5年~ | |
シーリング劣化 | 5年~ | ||
チョーキング | 7年~ | ||
素地 | 膨れ、剥離 | 7年~ | |
ひび割れ、腐食 | 10年~ | ||
反り | 10年~ |
※経年数は、窯業系サイディングを例にしておよその年数を記載しています。
使っている外壁材や置かれている環境によって大幅に異なります。
サイディングだけに限らず、処置が遅くなればなるほど、メンテナンス費用も大きくなり、メンテナンスでは手に負えなくなる場合もあるのです。
また、サイディングボードは種類によっては、メンテナンスがいらないメンテナンスフリーと呼ばれたりすることがあるのですが、それには誤解があります。形あるものは必ず老朽化しますので、サイディングボード同士をつなぐシーリングの劣化が先に始まったり、振動などによって素材自体にヒビ割れや欠けが発生したりなどは、メンテナンスフリーといわれるサイディングでも起こりうるのです。
よってメンテナンスフリーではなく正しくは『あまりメンテナンスをしなくて良い』『次回メンテナンスまでの期間を長くできる』、のが、メンテナンスフリーのサイディングですので、注意が必要です。
3. サイディングの主なメンテナンス方法
サイディングには、目地のシーリングの劣化、サイディングの表面塗装の劣化、サイディング自体の劣化の3種類に分けられます。
3-1.シーリング補修の施工の流れ
ボードとボードの間のつなぎ目の部分には、必ずシーリング剤というシリコン樹脂を充填して(埋めて)いますが、この素材は約5年で劣化し、徐々にやせてひび割れしていきます。
よって、以下の方法で補修する必要があります。
施工方法 | ||
---|---|---|
① | 古いシーリングを撤去します。カッターで切れ目を入れて、既存のシーリングを撤去します。 | |
② | バックアップ材やボンドブレーカー等を用いて2面接着します。 | |
③ | 壁にシーリング材がつかないよう目地のまわりにマスキングテープを貼り、刷毛でシーリング専用プライマーを塗布して | |
④ | シーリング材を充填します。 | |
⑤ | 充填後ヘラで押さえ、成形してください。最後にマスキングテープを剥がして完成 |
3-2.塗装の施工の流れ
さらに年数がたっていくと、外壁を守っていた塗膜(塗料)が劣化していきます。劣化のサインとしては、チョーキング現象というものが代表的でこの現象が、メンテナンス時期だというサインになります。その場合以下の塗装にてメンテナンスすることをお勧めします。
施工方法 | ||
---|---|---|
① | 足場組立・養生 |
足場を組立て、洗浄水の飛散を防止するシートを掛けて養生する。 |
② | 洗浄 |
塗料と建材の密着を強くする為、外壁に付着した埃や汚れを落とす。 |
③ | 下地補修 |
外壁のひび割れや劣化したシーリング(コーキング)等の補修を行う。 |
④ | 養生 |
窓ガラスや植木・地面の床等、塗料が付いてしまうと不都合な場所をビニールやテープで覆う。 |
⑤ | 塗装(下塗) |
下塗りは、仕上がりの色となる上塗り材と外壁を密着させる接着剤のような役割を果たす。 |
⑥ | 塗装(中塗・上塗) |
実際の仕上がりの色の塗料を塗る。塗料の性能を発揮させる為、基準塗布量と乾燥時間を厳守して、塗り重ねる。 |
⑦ | 足場解体 |
足場を解体し、完工。 |
3-3.張替えの施工の流れ
塗膜の劣化を放置しておくと、建物の劣化はどんどん進行し、外壁の素地やその内部に外壁の反りやひび割れ、断熱材の腐食などの影響がでてきます。
サイディングの劣化により、雨漏りが発生しているなど、劣化が進行している場合は張替えを行う必要があります。
施工方法 | ||
---|---|---|
① | 足場組立 | 足場を組立てを行う。 |
② | 既存外壁材撤去 | 既存のサイディングを撤去する。 |
③ | 各種部材チェック・補修 | 断熱材や防湿シート、防水シート等、外壁内部にある部材が正常かどうか確認し、必要であれば交換・補強する。 |
④ | 水切り・スターター、本体設置 | 土台部に水切り、スターターを取付けます。そしてメーカーが指定する専用留付金具を用いてボードを留めつけていく。 |
⑤ | コーキング処理 | すべての部材を留め付けた後、ハットジョイナー等のバックアップ材をつめてからシーリング剤を充填させる。 |
⑥ | 撤去物取り付け・外部足場解体 | 付帯部分など、一時撤去していたものを取り付け、足場を解体して完工。 |
劣化を放置し、時間がたてばたつほどメンテナンス範囲は広がり、それに比例してかかる費用や時間もどんどん増えていきます。早めに処置を考えましょう!