2019.09.04
建物用の塗料のひとつに『無機塗料』というものがあります。
これは、一般的な塗料の材料として用いられている有機物、炭素化合物を減らし、セラミックやケイ素などの無機物を配合している塗料のことです。
原材料に無機物を使用することで得られるメリットとデメリットについてご紹介します。
塗料の原材料として無機物を主に使用する無機塗料には、どのようなメリットやデメリットがあるのでしょうか?
無機塗料は、原材料に炭素化合物由来のものをあまり使用していません。
ここで言う『有機物』『炭素化合物』とは、石油由来の材料のことなどを表しているのですが、これらの炭素化合物は紫外線にさらされ続けると劣化を起こすというデメリットがあります。
無機塗料の場合は、紫外線による劣化が無いセラミックやケイ素などの無機物を主体として作られているため、紫外線に晒され続けても劣化が起こりにくいのです。
紫外線による塗膜の劣化では、塗膜に触れると粉状の汚れが付着する『チョーキング』が起こりますが、無機塗料ならチョーキングの発生を抑えることができる、これが無機塗料の大きなメリットと言えます。
また、無機塗料は火災に強いという点もメリットです。
有機塗料に用いられているさまざまな樹脂は、石油が原材料のため、火で炙られると塗膜そのものに着火してしまいます。
無機塗料の場合は、主成分となるケイ素やセラミックが燃えにくい性質を持つため、火災時の延焼をある程度抑えることができるのです。
ただし、無機塗料とは言っても有機物の利用がゼロというわけではありませんので、長時間火に晒さると着火してしまいますし、熱そのものを遮断するわけでは無いため、塗膜が燃える前に建物の構造(柱や壁材など)が先に燃えてしまう可能性がある点には注意してください。
無機塗料に使用されている材料は、セラミックやケイ素などのガラスや磁器の主成分と同じです。
これらの製品は、ご存知の通り伸びたり縮んだりすることがほとんどありません。
つまり、無機塗料もガラスや磁器などと同じように伸縮性が少ないという特徴があります。
そのため、地震や強風などによる建物の揺れ、外壁材の老朽化によるヒビなどが発生した場合に、塗膜が下地の動きに引っ張られ、塗膜自体も破れてしまうのです。
モルタルで壁を作っている場合などは、ヒビなどの発生が比較的多いため、有機塗料の中でも弾力性に優れた弾性塗料を用いた方が良いでしょう。
その他のデメリットについては、有機塗料に比べ、無機塗料は施工単価がやや高めという点が上げられます。
有機塗料の中で人気のシリコン塗料の場合、施工単価は1平方メートルあたり約2,500円からが相場ですが、無機塗料の場合は約4,000円が相場です。
耐用年数で考えると、シリコン塗料が約12年、無機塗料は約20年とされているため、長期的なコストパフォーマンスに大きな違いはありませんが、外壁のイメージを変える目的で頻繁な塗り替えを行うという場合は、無機塗料の施工コストがデメリットとなるでしょう。
無機塗料は塗膜が堅く汚れがつきにくいという特徴がありますが、この特徴がリフォームの際に問題となることがあります。
リフォームで塗装を重ね塗りする際に、元々の塗料が無機塗料だった場合、新しい塗料が上手く定着せず、短期間で塗装が剥がれてしまうのです。
そのため、無機塗料を使用した箇所を再塗装する場合には、古い塗膜を十分に取り除かなければなりません。
もし、現在無機塗料で塗装済みという方は、塗装リフォームを行う際には無機塗料を利用している旨を必ず施工業者に伝えておきましょう。
2020.04.20
2020.04.14